カナダ政府は今後3年間で留学生ビザの発給数を最大60%削減する方針
カナダ政府は、今後3年間にわたり留学生向けのビザ発給をさらに抑制する方針を明らかにしました。2025年の年間報告書によると、2026年に発給予定の留学許可数は約15万5千件、2027年と2028年はそれぞれ15万件と設定されており、これは2023年の約43万5千件からおよそ3分の1にまで減少する計画です。
この方針は、急増する一時滞在者数を抑えることを目的とした移民政策全体の見直しの一環です。移民・難民・市民権大臣のレナ・メトルジェ・ディアブ氏は、「2018年にはカナダの人口の3.3%が一時滞在者だったが、2024年には7.5%に達した。住宅、医療、教育への負担を考えると、現行の制度は持続可能ではない」と述べています。
一方で、教育業界からは懸念の声も上がっています。カナダ国際教育局(CBIE)によれば、2025年第1四半期の留学許可申請の承認率は33%にまで低下しており、2023年の60%から大幅に落ち込んでいます。また、教育関連企業の試算では、今年発給される新規留学許可は8万件前後にとどまる可能性があるとされています。
こうした急激な引き締めにより、カナダの大学やカレッジでは雇用やプログラム運営への影響が懸念されており、「過剰な政策修正により国際学生の信頼が損なわれつつある」との指摘も出ています。特に地方やフランス語圏コミュニティでは、学生数減少による地域経済への打撃が懸念されています。
一方で、今後の制度改善に期待を寄せる動きもあります。カナダ大学協会(Universities Canada)は、大学院生向けの証明書免除(PAL Exemption)の再導入や博士課程申請者の審査迅速化、就労型学習の制度整備など、前向きな変更が検討されていると発表しました。
なお、今回の発表は主に大学・カレッジなど高等教育レベルを対象としたものであり、現時点では中学・高校レベルの留学生への直接的な影響は限定的とみられています。ただし、審査体制全体が厳格化する傾向にあるため、申請手続きや学校選びの早期対応が重要となります。
